脂肪腫(リポーマ)と類似する疾患。赤い場合は?見分け方と治療法を専門医が解説

「脂肪腫のようなしこりが赤くなってきたけれど、これって大丈夫?」
「脂肪腫と似ているけれど、痛みや赤みがあるから別の病気かも……」
「脂肪腫と粉瘤の違いや、類似疾患の見分け方を知りたい…」

しこりに赤みや痛みがあると「脂肪腫が悪化したのでは」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。しかし、脂肪腫そのものは通常赤くなることはなく、しこりの周辺が赤く腫れていたり、痛みがある場合は、粉瘤(ふんりゅう)の炎症や、別の類似疾患である可能性があります。

本記事では、脂肪腫と似た見た目を持つ類似疾患の特徴や見分け方について詳しく解説します。「ただの脂肪の塊だと思っていたけれど、赤みが出て心配」という方も、ご自身の症状の原因と照らし合わせながら、適切な治療のヒントとしてぜひご覧ください。

 

脂肪腫(リポーマ)と類似している疾患

脂肪腫(リポーマ)と類似している疾患は、サイズや発生部位などにより、下記の疾患と見分けがつかないことがあります。正確な診断のためには専門医による鑑別が必要です。

  • ・ガングリオン
  • ・粉瘤(アテローム)
  • ・滑液包炎(かつえきほうえん)
  • ・神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)

 
脂肪腫は、臓器や骨以外の軟部組織にできる軟部腫瘍のひとつです。上記の疾患は非腫瘍性・腫瘍性のものがありますが、すべて良性です。ただし、脂肪腫と似ているものにもうひとつ「脂肪肉腫」があり、こちらは悪性腫瘍のため、疑わしい場合には病理検査を行う必要があります。

脂肪腫と類似疾患の比較一覧表

疾患名 よくできる部位 見た目・硬さ・その他の特徴 赤くなる?
脂肪腫 背中、肩、首、太もも 肌色〜やや黄色。柔らかくゴムのような弾力。通常は無痛。 基本的にならない
粉瘤 (アテローム) 顔、耳、背中、おしり 青黒い。中央に黒い点(開口部)。硬く弾力がある。独特の臭い。 炎症時に赤くなる
ガングリオン 手首、指などの関節付近 肌色。脂肪腫より硬め。中身はゼリー状の液体。無痛が多い。 通常ならない
滑液包炎 肩、肘、膝などの関節 関節の腫れ。柔らかく弾力がある。押すと痛む。中身は黄色い液体。 炎症で赤くなることあり
神経鞘腫 四肢や体幹の末梢神経 肌色のこぶ。弾力がある。痛みやしびれを伴うことがある。 神経線維腫だとなることあり
脂肪肉腫 (悪性) 太ももなど全身 脂肪腫と酷似。硬く、周囲に癒着して動かない。急成長に注意。 赤みや痛み、熱感を伴うことあり

脂肪腫については、動画でも詳しく解説しております。

 

脂肪腫が赤くなることはある?

脂肪腫は皮膚の下にできる良性腫瘍で、通常は皮膚表面に赤みを伴うことはほとんどありません。脂肪細胞が局所的に増殖してできるものであり、皮膚の深い層でゆっくりと成長するため、表面の皮膚に炎症や赤みを引き起こすことはないからです。

もし、脂肪腫らしきしこりの周辺が赤く腫れていたり、痛みや熱感を伴ったりする場合は、粉瘤など別の類似疾患が炎症を起こしている可能性や、稀に血管脂肪腫などの特殊なケースが疑われます。自己判断で放置しても大丈夫と決めつけず、赤みや痛みがある場合は、速やかに形成外科での診断を受けることをおすすめします。

 

脂肪腫と粉瘤(アテローム)の違い しこりが赤い・痛い場合は?

脂肪腫は脂肪の塊が薄い膜に包まれたもので、粉瘤は袋状の組織に垢や皮脂といった老廃物がたまったものです。どちらも徐々に大きくなる傾向はありますが、まったく異なる良性腫瘍です。

特徴(見た目・硬さ・内容物など)

脂肪腫と粉瘤は、どちらも皮膚の下にできる代表的なしこりですが、赤みの有無が大きな見分け方の一つです。

    • ・脂肪腫
      脂肪の塊。炎症を起こすことはほとんどなく、赤くなることはありません。皮膚の深い層にできやすく、ただ単に皮膚が盛り上がっているように見えます。

 

  • ・粉瘤
    皮膚の袋に垢が溜まったもの。細菌感染を起こしやすく(炎症性粉瘤)、赤く腫れ上がって激しい痛みを伴うことがあります。皮膚の浅い層にできやすく、開口部がある場合は皮脂が酸化して黒い点が見えたり、全体的に青黒く見えたりします。しこりが赤くなっている場合、それは脂肪腫ではなく、炎症を起こした粉瘤や、その他の感染症である可能性が極めて高いといえます。

好発部位

脂肪腫は背中や首、肩、臀部などに発生しやすく、四肢では上腕や大腿部など脂肪組織の多い部位に発生しやすい傾向があります。一方、粉瘤は顔や首、背中、耳の後ろなど皮脂腺が多い部位にできやすく、体幹部や鼠径部などにも発生します。

治療法

粉瘤と脂肪腫は、どちらも手術以外では根治できません。自然治癒はしないため、根本的に治すには外科的な摘出が必要です(※詳細は後述の「脂肪腫・粉瘤の治療法と手術について」で解説します)。

 

脂肪腫とガングリオンの違い

特徴(見た目・硬さ・内容物など)

ガングリオンは米粒大からピンポン玉程度までの大きさで、中身は液体がゼリー状になったものです。脂肪腫はゆっくり大きくなり、やわらかいので気付かれにくく、1㎝以上になって見つかることが多く見られます。中身は薄い膜に包まれた脂肪組織です。

好発部位

ガングリオンは関節に好発し、手関節や手指など関節包や腱鞘の近くに多く発生する傾向があります。一方、脂肪腫は背中や首、臀部に多く、四肢では上腕や大腿部などに発生しやすいのが特徴で、手足の先の方には少なくなっています。

治療法

どちらも症状がなく、見た目や日常生活への支障がなければ無理に治療する必要はありません。ガングリオンは中身がゼリー状の液体なので注射器で吸い出す治療が可能な場合もありますが、場合によっては手術が必要です。一方、脂肪腫は手術以外での治療法はありません。ふくらみが気になる場合には、ガングリオンは整形外科に、脂肪腫は形成外科にご相談ください。

 

脂肪腫と滑液包炎(かつえきほうえん)の違い

特徴(見た目・硬さ・内容物など)

脂肪腫は脂肪が薄い膜に包まれたものです。ゆっくりと大きくなるため、1㎝程度になってからはじめて気付くケースがよくあります。滑液包炎は袋の中にさらっとした黄色い液体が入っています。超音波で確認でき、注射器で液体を採取することで炎症の状態などを調べることができます。

好発部位

滑液包は関節と骨の間にある袋状の組織で、大きな動きを行う場所にあります。内側には少量の滑液が入っており、潤滑装置として働いています。滑液包炎ではこの滑液包が炎症を起こして関節に腫れや痛みを生じます。好発部位は、肩、肘、膝などです。脂肪腫は関節以外の場所にもできます。特に背中や首、臀部、上腕や太ももなどに多く見られます。

治療法

滑液包炎の治療では、炎症を抑えて痛みや腫れを緩和することが最優先です。また、原因に発症部位の酷使や生活習慣が関係している場合には、負担を軽減するために習慣の改善も必要になります。悪化して慢性化した場合には、外科的な治療が検討されることもあります。

 

脂肪腫と神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)の違い

特徴(見た目・硬さ・内容物など)

どちらも被膜を持つ良性腫瘍で、比較的ゆっくり成長して何年間も大きさがほとんど変わらないことが多くなっています。ただし、稀に比較的早く成長するものもあり、注意深く経過を見る必要があります。

好発部位

神経鞘腫は、末梢神経から発生するとされている良性腫瘍です。皮下組織や筋肉などに発症することが多く、浅い部分にできた場合には触れるとこぶのように感じられ、深い部分に発生すると、痛みやしびれなどの症状を起こして発見されることが多くなっています。脂肪腫は大半が皮下にでき、触れるとやわらかいボールのような弾力性があります。

治療法

どちらも症状がなく、見た目や日常生活への支障がなければ治療する必要はありませんが症状が、痛みやしびれがある場合には受診が必要です。体表面に近い場所にできた神経鞘腫の場合には、整形外科や形成外科、皮膚科で診断が可能です。

 

注意すべき悪性腫瘍「脂肪肉腫」との違い

脂肪肉腫は、脂肪組織から発生する悪性軟部腫瘍の一種です。悪性軟部腫瘍は比較的まれながんですが、その中では脂肪肉腫の割合が高いとされています。脂肪腫と同じように、痛みのないしこりとして気付くことが多く、見た目だけでは判断が難しくなっています。

特に、急に大きくなる、硬い、深い部分にある、5cm以上ある、痛みを伴うといったしこりは注意が必要です。四肢や臀部、後腹膜などに発生しやすく、後腹膜にできた場合は自覚せずに大きくなることもあります。気になるしこりがある場合は、自己判断せず医療機関で検査を受けましょう。

 

脂肪腫や粉瘤が疑われる場合は何科を受診すべき?

脂肪腫や粉瘤が疑われる場合は、まず皮膚科や形成外科を受診するのが一般的です。皮膚科では、しこりが脂肪腫や粉瘤なのか、ニキビ・炎症・ほかの皮膚疾患なのかを診断してもらえます。一方で、粉瘤の摘出や脂肪腫の切除など、手術を伴う治療が必要な場合は、傷跡の見た目にも配慮できる形成外科が選択肢になります。

特に、しこりが急に大きくなってきた、赤みや腫れ・痛みがある、膿や臭いを伴う、硬く動きにくい、5cm以上ある、深い場所にあるように感じる場合は、早めの受診が推奨されます。また、発熱や痛みが強い場合は、炎症や感染が進んでいる可能性もあるため、自己判断で潰したり押し出したりせず、医療機関で相談しましょう。

 

脂肪腫・粉瘤の治療法と手術について

脂肪腫や粉瘤は自然に完治しないため、見た目が気になる場合や大きくなっている場合、痛み・炎症を伴う場合には手術による治療が一般的です。どちらも皮膚にできるしこりですが、原因や摘出する組織が異なるため、手術方法も異なります。

脂肪腫の治療法

脂肪腫の手術では、局所麻酔を使用して皮膚を切開し、皮膚の下にある脂肪のかたまりを取り除いていきます。脂肪腫は比較的大きくなることもあるため、しこりの大きさや深さによって切開範囲が変わります。摘出後は傷口を縫合し、抜糸や経過観察を行っていきます。

脂肪腫は良性腫瘍であることが多いものの、急に大きくなる、硬い、深い場所にある、痛みがある場合は、脂肪肉腫など別の疾患との鑑別をすることもあります。

粉瘤の治療法

粉瘤の手術では、皮膚の下にある袋状の組織を取り除いていきます。代表的な方法としては、「くり抜き法」と「切開法」があります。

くり抜き法は、器具でふくらみに小さな穴を開け、そこから内容物と袋状の組織を取り出す方法です。切開範囲を小さく抑えられるため、傷跡をできるだけ目立たせずに治療したい方におすすめです。ただし、大きさや炎症の有無によって選択できない場合もあります。

切開法は、メスで皮膚を切開して、粉瘤を袋ごと取り除く方法です。粉瘤を直接確認しながら摘出できるため、大きな粉瘤や炎症を繰り返している粉瘤に適しています。

また、炎症が強く膿がたまっている場合は、すぐに袋を摘出せず、まず切開して膿を出す処置を行うことがあります。その後の炎症が落ち着いてから改めて袋を取り除く二段階の治療になる場合もあります。

 

脂肪腫は、放置するとどうなるのか

脂肪腫は放置することにより悪性化するケースがほとんどありません。ただし、摘出後の病理検査で脂肪腫ではなく、悪性の脂肪肉腫であることが判明するケースが稀に存在するため注意が必要です。なお、悪性かどうかは、腫瘍の大きさ、発生した深さ、硬さ、そして下層組織への癒着などの特徴である程度判断できます。

大阪梅田形成外科粉瘤クリニックでは、形成外科専門医による日帰り手術を行っております。粉瘤をはじめ、脂肪腫や眼瞼下垂、耳垂裂と幅広い手術に対応しております。見た目にもきれいな仕上がりで再発の少ない手術を行っております。

また当院では女性の医師による診察・手術も行っております。超音波検査、必要に応じて他院でCT検査、MRI検査などによる画像検査を行い、正確な診断を心がけています。また、手術で全身麻酔が必要になるケースや悪性と疑われるものの場合、連携している大学病院などをご紹介してスムーズな治療を受けられるようにしています。

 

【重要】しこりが赤く腫れている方へ

しこりが赤く腫れている(炎症を起こしている)ときは、無理に押し出そうとしたり、自己判断で潰したりしないでください。無理に触ると細菌感染が悪化し、治りが遅くなるだけでなく、術後の傷跡が残りやすくなってしまいます。赤みや痛みがある場合は、早急に当院(形成外科)を受診してください。

 

脂肪腫や類似疾患に関するよくある質問(Q&A)

脂肪腫と粉瘤は自分で見分けられますか?

脂肪腫と粉瘤はどちらも皮膚の下にしこりとして現れるため、見た目だけで正確に見分けることは難しいです。自分で見分けるポイントとしては、脂肪腫はやわらかく、赤みや痛みを伴いにくいしこりであることが多いです。一方、粉瘤は中央に黒い点が見えることがあり、炎症を起こすと赤み・腫れ・痛み・臭いを伴う場合があります。判断に迷う場合は、皮膚科や形成外科を受診しましょう。

しこりが赤くなった場合は何が考えられますか?

脂肪腫そのものは、赤く腫れたり痛みを伴ったりすることはほとんどありません。しこりの周囲が赤い、痛い、熱を持っている、膿のようなものが出る場合は、粉瘤の炎症や感染、ほかの皮膚疾患の可能性があります。炎症が進むと痛みが強くなることもあるため、無理に押したり潰したりせず、早めに医療機関で相談しましょう。

脂肪腫が悪性腫瘍に変わることはありますか?

脂肪腫が脂肪肉腫などの悪性腫瘍に変化することは基本的にまれです。しかし、急に大きくなる、硬くて動きにくい、痛みがある、5cm以上ある、深い場所にあるように感じるしこりは、悪性腫瘍との鑑別が必要になる場合があります。

 

院長紹介

日本形成外科学会 専門医 古林 玄

東京皮膚のできものと粉瘤クリニックふるばやし形成外科 新宿院 院長 古林 玄

私は大阪医科大学を卒業後、大阪医科大学附属病院、市立奈良病院を経て東京へ行き、がん研有明病院、聖路加国際病院で形成外科の専門医として様々な手術の経験を積んできました。

がん研有明病院では再建症例を中心に形成外科分野の治療を行い、乳房再建および整形外科分野の再建を中心に手術を行ってきました。聖路加国際病院では整容的な面から顔面領域の形態手術、また、先天性疾患、手の外科、全身の再建手術に携わって参りました。

この経験を活かし、全身における腫瘍切除を形成外科的に適切な切除を目指し、傷跡の目立たない治療を提供できればと考えております。

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